中小企業経営者が押さえておくべき経理業務の基本と効率化のポイント

経理業務は、企業の基盤を支える重要な役割を担っています。

特に中小企業では、経理業務の正確さや効率が、経営の安定と成長に直接的な影響を及ぼします。しかし、経営者自身が経理業務に詳しくない場合、業務の管理や効率化が後回しになりがちです。その結果、資金繰りや税務対応に問題が生じることも少なくありません。

この記事では、中小企業経営者が押さえておくべき経理業務の基本と、効率化するための具体的な方法について解説します。

経理業務をしっかりと理解し、効率化を図ることで、経営判断が迅速になり、企業の持続的な成長に繋がります。まずは、経理業務が企業にどのような影響を与えるのか、その基本を見ていきましょう。


目次

1. 経理業務の基本

経理業務は企業の財務状況を把握し、適切な経営判断を行うための重要な基盤です。

特に中小企業においては、限られたリソースを最大限に活用するために、経理業務の基本をしっかりと押さえておくことが必要です。

ここでは、経理業務が企業経営にどのような影響を与えるのかを理解するため、基本的な流れを説明します。

基本的な経理業務の流れ

  1. 取引記録
    日々の取引を正確に記録することが経理業務の基礎となります。取引には仕入れ、売上、経費、給与などがあります。これらを正確に仕訳し、適切な勘定科目に振り分けることが重要です。
  2. 帳簿の作成と管理
    取引記録を基に、仕訳帳や総勘定元帳といった帳簿を作成し、管理します。これらの帳簿は、企業の財務状況を把握するための基本的なツールであり、経営者が経営判断を行う際の重要な情報源となります。かなり高度な経理知識と技術が必要ですが、現在では会計システムを利用すると自動的に出力してくれます。
  3. 月次・年次決算業務
    一定期間ごとに、取引の集計を行い、損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を作成します。これにより、企業の収益性や財務状態を明確に把握できます。特に年次決算では、税務申告に必要な情報が含まれるため、正確な計算と報告が求められます。税理士に作成業務を依頼している企業も少なくありませんが、作成のみで数字の意味を教えてくれない税理士もいるため、経営者が財務諸表を理解できるように努める必要があります。
  4. 税務申告と納税
    経理業務の最終ステップとして、税務申告と納税があります。適切な税務処理を行うことで、税務リスクを低減し、企業の健全な経営を支えることができます。また、税務申告の際には、法律や規制の変化に注意し、最新の情報に基づいて対応することが重要です。

2. 経理業務の効率化の重要性

なぜ経理業務の効率化が必要か

経理業務は、単なる記帳や報告に留まらず、企業の経営全体に大きな影響を与える重要なプロセスです。しかし、多くの中小企業では、限られたリソースで経理業務を行っているため、業務が煩雑になりやすいという課題があります。

経理業務を効率化することは、コスト削減や時間短縮に繋がり、経営者やスタッフの負担を軽減します。効率的な経理業務は、企業全体の生産性向上にも寄与します。

効率化がもたらすメリット

  1. 経営判断の迅速化
    経理業務が効率化されると、経営者が迅速に必要な情報を得ることができ、タイムリーな経営判断が可能になります。特にキャッシュフロー管理が強化され、資金繰りの改善に繋がります。
  2. 資金繰りの改善
    経理業務の効率化は、支払いや請求のタイミングを適切に管理することを可能にし、資金繰りの安定化を図ります。これにより、企業の財務状況が改善し、経営の安定性が増します。
  3. 業務の透明性向上
    業務が効率化されることで、経理業務の透明性が向上します。これは内部統制の強化に繋がり、経営者や投資家にとって信頼性の高い財務情報を提供することが可能になります。

これらのメリットを実現するために、経理業務の効率化は中小企業にとって不可欠な課題です。次に、具体的な効率化の方法について詳しく見ていきます。

3. 経理業務を効率化する具体的な方法

経理業務の効率化は、企業の生産性を向上させるだけでなく、リソースの無駄を削減し、より戦略的な経営判断を可能にします。ここでは、経理業務を効率化するための具体的な方法について詳しく説明します。

クラウド会計システムの導入

クラウド会計システムは、経理業務の効率化を図る上で非常に有効なツールです。freeeやMoney Forwardなどのシステムを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

自動化による作業負担の軽減
クラウド会計システムは、取引データの自動入力や仕訳の自動生成を行い、手動での記帳作業を大幅に削減します。これにより、作業ミスを減らし、業務の効率化を実現します。

リアルタイムでのデータ共有
クラウドベースのシステムを利用することで、複数の担当者や外部の専門家とリアルタイムでデータを共有できます。これにより、経理業務が一貫して行われ、情報の更新や確認が迅速に行えるようになります。

導入と活用のポイント
クラウド会計システムを導入する際には、まず現状の業務フローを見直し、どの業務が自動化できるかを確認します。システムの選定にあたっては、企業の規模や業種に合った機能を持つシステムを選ぶことが重要です。

導入後は、システムの活用に関する社員教育を行い、全員がシステムを効果的に使用できるようにしましょう。

業務フローの見直し

経理業務を効率化するためには、現行の業務フローを見直し、無駄を省くことが不可欠です。

以下のステップで、効率的な業務フローを設計します。

現状の業務フローの把握
まず、現在の経理業務がどのように進行しているかを詳細に把握します。各業務のプロセスや担当者、使用しているツールを整理し、どこに無駄があるのかを洗い出します。

業務の整理と再構築
無駄な作業や重複した業務を排除し、効率的な業務フローを設計します。例えば、デジタルツールの活用による紙ベースの作業の削減や、業務の一元管理を行うことで、業務効率を高めることができます。

フローの標準化と継続的な見直し
新たに設計した業務フローを標準化し、全社的に共有します。さらに、業務が進行する中で定期的に見直しを行い、必要に応じて改善を図ります。

外部の専門家の活用

経理業務の一部を外部に委託することも、効率化の一つの方法です。プロフェッショナルの助けを借りることで、経営者や社内スタッフの負担を軽減し、より専門的な対応が可能になります。

アウトソーシングの利点
経理業務を専門家に委託することで、専門知識を持つ人材が業務を担当し、正確で効率的な処理が期待できます。また、コストの削減や社内リソースの有効活用も可能です。

選定と契約のポイント
アウトソーシング先を選定する際には、信頼性や実績、提供するサービスの範囲をしっかりと確認しましょう。契約内容には、サービスレベルや費用、守秘義務に関する項目を明確に記載することが重要です。

4. 中小企業経営者が避けるべき経理業務の落とし穴

経理業務を適切に管理することは、企業の健全な経営を維持するために不可欠ですが、よくあるミスを防ぐことも重要です。

ここでは、中小企業経営者が避けるべき経理業務の落とし穴と、その対策について説明します。

よくあるミスとその対策

記帳漏れや誤記入
日常的な取引記録の中で、記帳漏れや誤記入が発生すると、後の決算や税務申告に影響を及ぼします。対策としては、定期的なチェックリストの活用や、クラウド会計システムによる自動仕訳を導入することが有効です。
 但し、会計システムを運用するスタッフは日商簿記2級以上の知識レベルかつ5年以上の経理実務経験が望ましいです。間違った仕訳だと解かる経理スタッフが1名以上いると経理実務が安定し、信頼をもって通常の経営に取り組むことができます。

経理業務の属人化
経理業務が特定の社員に依存していると、その社員が不在時に業務が滞るリスクがあります。業務を標準化し、複数のスタッフが同じ業務を遂行できる体制を整えることで、属人化を防ぎます。とは言っても、なかなかスタッフを多く雇用することも難しい状況だと思いますので、経営者が経理業務に慣れておくことや、経理に強いコンサルタントに業務委託をしておく等の対策も有効です。

税務対応の遅れ
税務申告や納税の遅れは、罰金や追加課税の対象となり、企業にとって大きなリスクです。申告期限や納税期限をしっかりと管理し、余裕を持って対応できるようにスケジュールを立てましょう。

通常は、決算月の2~3か月前に顧問税理士からスケジュールを伝えられますので、顧問税理士の指示に従って必要書類を揃えておけば、手続きをしてくれます。あまりにも対応が遅かったり、問い合わせてもすぐに回答をしてくれない場合は、顧問税理士の変更も考えておきましょう。

長期的な視点での経理業務管理

短期的な効率化だけでなく、持続可能な経理体制を構築することが重要です。以下のポイントを押さえて、長期的に経理業務を管理しましょう。

経理システムの継続的な改善
経理業務や会計システムは、企業の成長に伴って進化していく必要があります。定期的にシステムの見直しを行い、新しいツールや技術を積極的に取り入れましょう。

リスク管理と内部統制の強化
経理業務の透明性と信頼性を確保するために、内部統制を強化し、リスク管理を徹底します。内部監査や定期的な業務レビューを実施し、問題が発生する前に対応する仕組みを整えましょう。

人材育成と継承
経理担当者のスキルアップや、後継者の育成を計画的に行い、経理業務が持続的に運営されるようにします。研修プログラムや外部セミナーの活用も効果的です。


5. まとめと次のステップ

主要ポイントの要約

この記事では、中小企業経営者が押さえておくべき経理業務の基本と、効率化のポイントについて詳しく解説しました。

経理業務の基本: 取引記録から帳簿の作成、決算業務、税務申告まで、経理業務が企業経営においてどのような役割を果たすかを理解しました。これらの基本業務を確実に行うことで、企業の財務状況を正確に把握し、健全な経営を維持することが可能になります。

経理業務の効率化の重要性: 経理業務の効率化が、コスト削減や時間短縮、経営判断の迅速化、資金繰りの改善など、多くのメリットをもたらすことを説明しました。

効率化は、ただ業務を早く行うだけでなく、より戦略的な経営をサポートするために不可欠です。

経理業務を効率化する具体的な方法: クラウド会計システムの導入、業務フローの見直し、外部の専門家の活用など、実践的な効率化方法を紹介しました。これらの方法を活用することで、経理業務の負担を減らし、企業全体の業務効率を向上させることができます。

経理業務の落とし穴とその対策: 記帳ミスや業務の属人化、税務対応の遅れなど、よくある経理業務の落とし穴を避けるための具体的な対策を提案しました。長期的な視点で経理業務を管理し、持続可能な経理体制を構築することが重要です。

中小企業経営者が経理業務を把握することで、経営判断を円滑に行うことができ、経営基盤の強化につながりますので、経理業務の効率化を進め、安定的な経営を目指しましょう。


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この記事を書いた人

中小企業診断士。
17年以上の経理実務経験に裏打ちされた経営改善・コスト改善施策のご支援をいたします。

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